Ⅲ ゴースト・アンド・ルナティック

双子モノ日常系エセSF百合ラノベ(仮)。
さらに続き。移りゆく季節とともに、瑠生たち三人が遭遇する事件。
クランとラズの出生に関わる「白詰プラン」の謎がちらつく。

【あらすじ】
夏、クランとラズは『アルフライラ』という占い屋を訪ねたことで、自身らの出生に関わる重要な情報を掴む。
瑠生とともにアルフライラを再訪するクランだったが、そこで危険な罠に落ちてしまう。
後半はハロウィン。お祭りに盛り上がる街で、瑠生とラズは突如現れた「オバケ」を自称する少女を追うことに。

  • 01_プロローグ:Twins Chatting Ⅰ

    1 / 緋衣クラン ――毎日少しずつ何かが変わりながら、日々は続いていて。 季節は流れ、夏がやってきました。 霜北沢(シモキタザワ)の片隅に、キッチン・ロブスタという老舗の洋食屋さんがあります。 落ち着いた雰囲気が心地よい、昔ながらのまちの…

  • 02_遠征のフラペチーノ

    1 / 緋衣ラズ 次の土曜日の午前十一時、ぼくたちは真宿駅へとやってきた。「アルタと、おっきい街頭スクリーン……ようやく東口だぁ」「前にお兄さまと来たときは、こんなに迷わなかったはずなんですが」 霜北沢駅からは電車一本、十五分くらいで来られ…

  • 03_追想のミルクチョコレート

    1 / 緋衣瑠生 僕が「白詰瑠生」から「緋衣瑠生」になったのは、四歳の頃だった。 緋衣善(ヒゴロモ・ゼン)と緋衣律花(ヒゴロモ・リツカ)。それが、僕を引き取ってくれた今の両親の名前である。 緋衣家という新しい家庭に迎え入れられたことで、僕は…

  • 04_逢瀬のヨーグルトジェラート

    1 / 緋衣クラン 翌週の土曜日。 あの後さっそく例のチラシを調達してきた瑠生さんとともに、わたしはふたたび真宿にやってきました。 八月が近づき、日中の暑さはより厳しさを増しています。 わたしたちのホームタウンから地理的にはそこまで離れてい…

  • 05_狂乱のメープルクッキー

    1 / 緋衣ラズ クランは楽しんでいるだろうか。 瑠生さんの好みに合わせようとして、苦手な辛いものに挑戦するとか無謀なことをしていなければいいけど……。 いま読んでいる漫画のページをめくると、ちょうど似たようなシーンが描かれていた。あこがれ…

  • 06_落涙のフルーツゼリー

    1 / 緋衣クラン 廃ホテルから出たわたしたちは、身体の埃を払うのもほどほどに、アルフライラへと一直線に引き返しました。 道中またしてもラッキーイヤリングをつけた人々からのおかしな接触があったのですが、誰も彼も、早足で進む瑠生さんの鋭いひと…

  • 07_Ghost Ⅰ

    「もしもし。シェヘラザードさんの電話番号であってますか? わたし、クランです。第3号の」「……驚きましたわ。あんなことがあって昨日の今日どころか、当日の晩に連絡いただけるなんて」「とりあえず、ちゃんと通じることは確認しておこうと思ったので」…

  • 08_幕間 星月夜

    1 / 緋衣ラズ カレンダーはもうすぐ十月になるけど、まだまだ蒸し暑い日々が終わる気配はない。この夏は何年に一度の暑さみたいな見出しを去年に引き続きよく見た気がするし、来年もそうなるのかもしれない。 外気温は陽が落ちてなお高く、寝る時はほぼ…

  • 09_策謀のカスタードプリン

    1 / 緋衣瑠生 十月後半ともなると気温もだいぶおとなしくなり、屋外で思い切り走っても生命の危機を感じることはない。そういう季節になったこともあって、僕と同居人の双子は毎日のように、三人連れ立って近所をぐるっと一周ジョギングするようになって…

  • 10_遭遇のロリポップ

    1 / 緋衣瑠生 だけど……まさかこんなものを着せられることになるとは。「お兄ちゃん、観念して! 羽鳥さんも待ってるよ」「もう着替えちゃったんですから、お兄さま、行きましょう、よ……っ!」 ハロウィンイベント当日の朝。左右から手を引くクラン…

  • 11_追跡のシュークリーム

    1 / 緋衣瑠生 自称オバケこと、A.H.A.I.第6号の追跡は困難を極めた。 彼女は追いかけた先で右に現れ左に現れ、近づけば人混みをすり抜けて遠ざかり、姿を消したかと思えば後ろに現れる。そんなことを既に五回ほど繰り返していて、その神出鬼没…

  • 12_挟撃のチョコレートパフェ

    1 / 緋衣クラン「――お兄さま?」「ざんねん、私です。……クランちゃん、大丈夫ですか?」 気がついたとき、目の前にいたのは羽鳥青空さんでした。その名と同じ雲ひとつない晴天を背負った彼女が、わたしの顔を覗き込んでいます。 どうやらわたしは、…

  • 13_思慕のパンプキンパイ

    1 / 緋衣瑠生 人工人格にマシン以外の身体を与えるもうひとつの可能性。 大気中に存在する霊媒物質『エーテル』を凝集し、そこに人工的につくられた人格を宿した存在。 ただし現段階では完全に確立された技術ではなく、目視可能な実体として活動できる…

  • 14_Ghost Ⅱ

    「さて、どういった言い訳が聞けたものか」 床も壁も天井も白一色の広い空間に、白衣姿の男が一人立っている。 この場所に男のほかに人間はいない。 しかし彼の眼前には、ヒトと寸分変わらぬ知性と意識を持つ存在があった。 高さ二メートル程の黒い箱の群…

  • 15_エピローグ:Twins Chatting Ⅱ

    1 / 緋衣ラズ A.H.A.I.第6号ジュジュの登場によって一時はどうなるかと思われたハロウィンイベントも、午後はいたって平和なものだった。 スタンプラリーのガラガラ抽選は羽鳥さんがお菓子セットを当てたけど、その他は全滅。仮装コンテストも…

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