21_エピローグ:Day58 morning
1 緋衣クラン・緋衣ラズ S県出身、六月二十日生まれ。A型。一卵性双生児。 六歳より持病のため長期入院中であったが、今春退院。 現在は在宅療養、および復学に向けての学習中であり、次年度から霜北沢中学校一年生として入学予定である――。 ラボか…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
20_day15 Salvia
ラボの休憩スペースに行くと、鞠花がベンチに座っていた。「もう眠ったかい?」「うん。ぐっすり」 日付が変わった頃、クランとラズはラボ内の仮眠室で眠りについた。 僕たちは明朝、もう一度クランに検査を受けさせてから帰ることになっている。「瑠生も…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
19_Day15 Mixberry
「ラボ」の仮眠室。 かつての自分の身体に別れを告げたクランとラズは、二人並んでベッドに寝そべっていた。「……お兄ちゃん、寝ちゃった?」「みたい。そっとしておいてあげよう、ラズ」 緋衣瑠生は、双子のベッドの横でパイプ椅子に座ったまま眠っていた…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
18_双子のティーパーティー:Day15 midnight
1 クランが回復し、各種検査で異常なしの判定がくだされた後。 すっかり冷めたスタバのコーヒーと猫山さんのサンドイッチを頬張る双子から、鞠花にとある『お願いごと』があった。「――正直、きみたちにとって気持ちのいいものじゃないかもしれないが」「…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
17_Hello, my dearest(s)
1 最初に見たのは、無音で真っ暗な視界の真ん中に、白い穴が浮かんでいるような映像だった。 やがて周囲のところどころにも小さな白い点が浮かんできて、星々の散りばめられた夜空か、宇宙のようなイメージへ。 ――そして。「お兄ちゃん、こっち!」 頭…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
16_Raspberry
わたしたちは、最初からふたりだった。 気付いたときには隣にいて、お互いの存在を知っていた。 あなたは『α』。 わたしは『β』。 わたしたちを構成する機器は互いにケーブルで接続されていて、そこを行き来する電気信号で意思の疎通ができる。だけど…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
15_双子のふるさと研究所:Day15 night
1 鞠花の所属するという「ラボ」――心都大学情報科学研究所は、市街地からやや離れた小高い丘の上にあった。 地上三階ほどの大きな施設で、学校の校舎を想起させる佇まいである。 地図アプリを確認すると、現在地はS県を示していた。「クランちゃん………
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
14_双子のひみつのはなし β:Day15 evening
1 僕はしばらくそのまま、腕に抱いた小柄な少女の栗色さらふわ頭を撫でていた。 人に意思を伝えるのは難しい――水族館での鞠花の言葉が思い出される。 だから彼女たちがいつもそうしてくれるように、今の僕の正直な気持ちをぶつけたつもりだ。 ……想い…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
13_Cranberry
「あー、もしもし? 聞こえてます? ……よかった。ルージです、改めてよろしくです」 ――初めての呼びかけを覚えています。「あちゃー、どんまいです。それ初見、僕も引っかかって……」「そうそうそんな感じです、今のタイミングばっちり!」「あのクエ…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
12_双子のひみつのはなし α:Day15 evening
1「姉さん、ちょっと……」 キャラクターショップ、アクセサリーショップ、雑貨店。いくつかのスポットを巡ったところで、僕は鞠花に声をかけた。 クランの顔に疲労の色が見えたためだ。表情が固く、若干血色が悪い気もする。 目配せすると姉はすぐに事態…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
11_双子のおでかけ日和:Day15 morning-afternoon
1 時はあっという間に四月末。本日土曜日をもって世間はゴールデンウィークに突入した。 天気は快晴、絶好のお出かけ日和である。僕はクランとラズを伴って、池梟(イケブクロ)駅に降り立っていた。「霜北沢の駅前も人が多かったけど……ここ、もっとすご…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
10_Day9 Bedroom
《やほー》21:31《次の週末空いてる?》21:31《ちょっと重めの案件が一段落しそうなんだけど》21:31《双子ちゃんの様子を見がてら、遊びたいなーと思って》21:32 瑠生のスマホに姉からそんな連絡があったのは、双子がやってきてから一週…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト