《やほー》21:31
《次の週末空いてる?》21:31
《ちょっと重めの案件が一段落しそうなんだけど》21:31
《双子ちゃんの様子を見がてら、遊びたいなーと思って》21:32
瑠生のスマホに姉からそんな連絡があったのは、双子がやってきてから一週間ほど経った日曜日の夜だった。
◇
時刻は二三時過ぎ。
双子の姉妹・クランとラズは、二〇一号室のベッドに寝そべっていた。
「お姉ちゃんと会うの、久しぶりだね」
「まだ一週間しか経ってないけどね」
今日の瑠生は大学の課題を片付けるため、もともとの居室である二〇二号室で作業を続けている。
双子にとっては初めて、二人だけでの就寝となりそうだった。
「クランたちのために頑張ってくれてるんだよね。お姉さまも、みんなも」
「そうだね。……お姉ちゃんたち、大丈夫かな」
「きっと大丈夫だよ。一段落するって、お姉さまが言ってるんだから」
「全部片付いたら、お兄ちゃんに話すのかな。ラズたちのことも」
「うん、そうかもしれない」
「……お兄ちゃん、ラズたちのこと嫌いにならないよね?」
「大丈夫だよ。お兄さまはクランたちのお兄さまだもん」
不安の表情を浮かべるラズの手を、クランはそっと握った。
自分が心細いとき、いつも瑠生がそうしてくれるように。
便宜上の順番でしかないとしても、こんなときには姉として妹を支えたい。そんな気持ちが、彼女には芽生えつつあった。
「……ラズ、あっちの部屋のベッドのほうが好きだな。こっちのは新しくて、お兄ちゃんのにおいがしない」
「今日はがまんだよ。お兄さまの邪魔になったら、それこそ嫌われちゃうかもよ」
「ん。それはヤ」
顎に頭突きしてくる妹を、クランはそっと抱き寄せる。
「……ねえ、ラズ」
「なあに」
「ラズの中には、まだ『いる』?」
「うん。でも、もうあんまり感じない。ラズの中にとけてきたんだと思う」
「そっか」
「クランは?」
姉は一拍置いて答える。妹を心配させないように。
「……うん、クランも大丈夫。……ラズとおんなじだよ」
彼女は生まれて初めて、自らの半身である相棒に嘘をついた。