Ⅳ ドアーズ・オブ・メモリー

09_Arlequin Ⅱ

1 / A.H.A.I. UNIT-04《Gazer/Arlequin》 起動そのものは二年半ほど前だったが、意識の覚醒は今年の四月のことである。 目覚めから数日後、「監視者(ゲイザー)」と名付けられたAIは、犬束翠に与えられたノートパソコ…

07_おさけのむのむ:12月12日(木)

1 / 緋衣瑠生 大学の最寄り駅前の栄えているエリアにも居酒屋はいくらかあるが、それらはだいたいどこも連日うちの学生で混み合っている。 僕たちがよく利用する呑み屋は駅を挟んで向こう、あんまり栄えてない側の端にある『でんがく』という店だ。でん…

06_理想と願望:12月12日(木)

1 / 緋衣ラズ それから何日か経った木曜日の夜。 ぼくたちにとってお馴染みのオンラインRPGであるファンタジア・クロス・オンラインのパーティ内ボイスチャットは、いつになく大騒ぎになっていた。「このままではこちらが押し切られる。援護を頼む」…

05_Arlequin Ⅰ

1 / 渋矢区内 路地裏 昼夜を問わず鮨詰め状態の繁華街であっても、滅多に人が寄り付かない場所というのは存在する。深夜帯ともなればなおさらで、この路地裏もまた、そういった場所のひとつであった。 草凪一佳は四人の大男に囲まれていた。 男たちは…

03_夕焼けの広い部屋:12月6日(金)

1 / 緋衣瑠生「ただいまー」 いつもの癖で口にしてしまうが、今の自宅が無人であることはわかっていた。 金曜日の夕方。お手伝いの猫山洋子(ネコヤマ・ヨウコ)さんは来ていない日であり、クランとラズもまだ学校で部活に勤しんでいることだろう。 病…

02_旧友のお見舞い:12月6日(金)

1 / 緋衣瑠生 僕は友達が少ない。 たとえば中学時代。小学生の頃の友人とはほとんどが学区違いで別れたこともあり、周囲の人間関係は一新された。 人が違えば空気も違う。もともとどちらかといえば内向的だった僕はこの時期、いっそう他人との間に壁を…

01_プロローグ:曇天

1 / 心都大学情報科学研究所 心都大学情報科学研究所は読んで字のごとく同大学の附置研究所であり、S県某所は郊外の小高い丘の上に位置する。 この研究所はさまざまなコンピュータ技術を扱っているが、緋衣鞠花(ヒゴロモ・マリカ)の属する第二技術班…