09_双子とゲームとお兄(さま/ちゃん):Day3
1「それじゃ、いってきます」「「いってらっしゃい、お兄(さま/ちゃん)」」「いってらっしゃいませ」 ありふれた挨拶なのに、誰かとそれを交わすのはすごく久しぶりのことだった。週明け月曜日、僕は双子と猫山さんに見送られて大学へと出発した。 目が…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
08_双子とスマホとマグカップ:Day2 morning-evening
1 そして僕は猫山さんに死ぬほど笑われた。 曰く、あの「♡おまけ♡」は、「入れとけば絶対楽しんでくれるから……」と鞠花から託されたものだそうだ。それが秒で思惑通りになっているとなれば、そりゃそうだろう。僕も乾いた笑いを漏らすしかなかった。 …
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
07_双子と着替えと隣部屋:Day2 morning
1 僕は朝にはあまり強くない。 特に予定がないならば、日曜日の起床は早くとも午前一〇時を過ぎる。「あんまりねぼすけだったら布団剥いで起こしちゃうからね」などと、果たしてどの口が言うのか。 しかしこの日、目覚めて枕元のスマホを確認すると時刻は…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
06_Day1 Bathtime
緋衣瑠生の住まうマンションの一室、就寝の一時間ほど前。 双子の姉妹・クランとラズは、風呂場の浴槽に並んで浸かっていた。「ねえ、クラン」 左隣に座る双子の姉に、妹が語りかける。「……あったかくて、気持ちいいね」「うん。不思議だね」「お兄ちゃ…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
05_双子は帰りたくない:Day1 evening-night
1 帰宅した僕は、昼食に出かける前と同じようにソファに座って双子に挟まれていた。 おそらく無意識にしているのだろうが、二人が横並びになるとクランは左側、ラズは右側に陣取るのが基本ポジションらしい。 何気なくテレビをつけると、午前中に見ていた…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
04_双子は懐いている:Day1 noon-afternoon
1 ――いずれにせよ、もう少ししたら二人には瑠生と会ってもらうつもりだったんだ。 研究熱心な姉が言うには、その上でわが家に双子を預けようというのが当初のシナリオだったらしい。いずれにせよ託児所はうちという筋書きだ。 機密事項が関わるとかで詳…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
03_双子はどこからやってきた?:Day1 morning
1「……で、その……クラン」「はいっ!」「とラズ」「はーいっ」「が、どうして突然ここに?」 問うと、クランとラズは胸の前で両のこぶしをぎゅっと握った。「「お兄(さま/ちゃん)に会いたくて、お姉(さま/ちゃん)のところから来ました!」」 また…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
02_Fantasia X Online
1 ファンタジア・クロス・オンライン――通称『FXO』。 それが、僕がかつて遊んでいたオンラインゲームのタイトルである。 剣と魔法の世界でパーティを組み、ダンジョンを攻略し、モンスターと戦い、レアアイテムを求めて周回を繰り返す。そんな昔なが…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト
01_プロローグ:Day1 morning
1 ピーンポーン。 来客を告げるチャイムの音が意識を呼び戻す。 時は四月の中ごろ、二十歳の春。土曜日なので大学の講義はなく、かといってこれといった予定もない、絶好のだらけ日和な午前中。 テレビモニタにYouTubeを垂れ流し、ソファに寝そべ…
Ⅰ ハロー・マイ・ディアレスト