Ⅲ ゴースト・アンド・ルナティック

03_追想のミルクチョコレート

1 / 緋衣瑠生 僕が「白詰瑠生」から「緋衣瑠生」になったのは、四歳の頃だった。 産みの両親を亡くした直後の僕は、親戚の家の世話になっていたのだが、遠くないうちにそこを出ていく運命にあった。引き取り手がいないため、児童養護施設への入所が検討…

02_遠征のフラペチーノ

1 / 緋衣ラズ 次の土曜日の午前十一時、ぼくたちは真宿駅へとやってきた。「アルタと、おっきい街頭スクリーン……ようやく東口だぁ」「前にお兄さまと来たときは、こんなに迷わなかったはずなんですが」 霜北沢駅からは電車一本、十五分くらいで来られ…

01_プロローグ:Twins Chatting Ⅰ

1 / 緋衣クラン ――毎日少しずつ何かが変わりながら、日々は続いていて。 季節は流れ、夏がやってきました。 霜北沢(シモキタザワ)の片隅に、キッチン・ロブスタという老舗の洋食屋さんがあります。落ち着いた雰囲気が心地よい、昔ながらのまちのレ…