Ⅱ ロンリー・スウォーム・スカイハイ

03_その想いは近くて遠く

1 / 緋衣ラズ マンションの外階段を駆け下りて、すっかり馴染みになった道を走り進む。 天気は快晴。暑すぎず寒すぎず、あたたかな春という季節がぼくは好きだ。 ぼくたちの住んでいるこのマンションから霜北沢中学までは、徒歩十五分ほど。半分近く進…

02_家族関係はあいまいで

1 / 緋衣瑠生 夕暮れ時の図書室、やわらかな風がカーテン靡かす窓際にふたり。 自分たち以外の人間は誰もいない。 茜色の光を受け、隣り合って伸びるふたつの影が、ひとつになろうとしている。 見つめあった瞳の中に自分がいる。 すでにその中に吸い…